第173章

久世直哉は床に這いつくばり、必死に身体をもがかせた。立ち上がろうとしても、両脚は鉛でも流し込まれたみたいに重い。感覚はなく、思うように動かせない。屈辱の姿勢のまま、ただうつ伏せで転がるしかなかった。

――前に、酒井初音に蹴り倒されたときと同じだ。

あの姉弟は、どこまで性根が腐っている。

「直哉兄、直哉兄……大丈夫?」

久世美月は頬の痛みも構わず駆け寄り、直哉を起こそうとする。だが力が足りない。弱々しく支え合う二人の姿は、あまりにも哀れだった。

廊下を通る者たちが、ちらりと好奇の視線を投げてくる。けれど――ここ一念寺で、他人の揉め事に首を突っ込む者はいない。

久世直哉は腕で床を押し...

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